アルツハイマー病の発症そのものを防ぐ、新たな治療や予防への道が開けるかもしれません。脳内に原因となる異常なたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」がたまり始める「種」のような物質が、新たに特定されました。
アルツハイマー病の患者の脳では、「アミロイドベータ」という異常なたんぱく質が蓄積して「老人斑」という構造物をつくり、これが神経細胞の働きを低下させて認知症を引き起こすと考えられています。このたんぱく質は、発症の約20年前からすでにたまり始めていることがわかっていましたが、そのきっかけとなる最初の物質はこれまで不明でした。
この物質を突き止めたのは、国立精神・神経医療研究センターなどの日米共同研究チームです。チームは、脳内にアミロイドベータがたまるように遺伝子を改変したマウスの脳から、老人斑の成分を分析し、3つの候補物質を見つけました。その3つのうち1つずつを、記憶をつかさどる脳の「海馬」という部位に注射したところ、ある1つの物質のときだけ、アミロイドベータの蓄積量が急増することが判明しました。
さらに、アルツハイマー病で亡くなった6人の患者の脳からもこの物質が検出され、それをマウスに注射すると、やはりアミロイドベータの蓄積が始まりました。一方で、アルツハイマー病以外の原因で死亡した5人の脳からは見つかりませんでした。
研究チームは、この物質をアミロイドベータの蓄積を促す「種」であると特定し、「ピーク1Aβ」と命名しました。
近年、公的医療保険が適用された「レカネマブ」や「ドナネマブ」などの最新の治療薬は、すでに脳内にできてしまった老人斑を除去することを目的としています。しかし、この「ピーク1Aβ」の働きを抑える物質を開発できれば、老人斑の形成そのものを、根元から防げるようになります。
同センター神経研究所の橋本唯史部長は、「ピーク1Aβを血液検査や画像診断などで検出する方法を開発し、早期発見や発症の仕組みの解明につなげていきたい」と話しています。
この研究成果は、20日付の英国の医学誌「ブレーン・コミュニケーションズ」に掲載されました。