地球以外で唯一窒素を主成分とする分厚い大気を持つ、土星の衛星タイタン。大気の中を自力で飛び回り、生命誕生前の化学状態を調査するNASAのドローン型探査機「ドラゴンフライ」の開発が、いよいよ最終段階に入りました。
ミッションを主導するアメリカのジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)は、探査機の全長約4メートルの胴体部分にかかる過酷な構造試験をクリアし、2026年7月からシステム統合作業に着手したと発表しました。2028年の打ち上げに向けて大きな一歩を踏み出しています。
タイタンの表面には、液体のメタンやエタンでできた湖が存在し、平均気温はマイナス179度という極寒の世界です。また、表面の気圧は地球の約1.5倍もあります。このため、ドラゴンフライは真空を飛ぶ通常の宇宙探査機とは異なり、分厚い大気が機体内部に侵入しないかを調べる「密閉性試験」などの特殊なテストが実施されました。
さらに、8つのローター(回転翼)が生み出す振動への耐久性や、メタンの雨や塵が舞う環境にも耐えられる直径約87センチの高利得アンテナの動作確認も行われ、すべて良好な結果を収めました。
今後は電子機器や科学観測機器、配線などが順次組み込まれていく予定です。ドラゴンフライは、着陸地点にとどまらず、自力で空を飛んで多様な場所へ移動しながら探査を行う“空飛ぶ科学実験室”として期待されています。タイタンの空を舞い、生命の起源のヒントを解き明かす日が待たれます。