合体する中性子星から放たれる未知の光や、金やプラチナといった重元素が生れる瞬間――ほんの数日で急激に暗くなってしまう突発的な天体現象の真相に迫るため、ハワイのすばる望遠鏡に新しい近赤外線分光器「NINJA(ニンジャ)」が搭載され、2026年夏から初の試験観測に臨む。
近年、重力波望遠鏡の台頭により、ブラックホールや中性子星の合体に伴って発生する「キロノバ」と呼ばれる激しい閃光が捉えられるようになった。しかし、こうした現象の残光は発生からわずか数日で急激に減衰するため、その波長ごとの強さを分析する分光観測はまさに時間との勝負となる。
この「時間との勝負」を制するために開発されたNINJAは、「即応性」「高効率」「高感度」という3つの際立った強みを持つ。第一に、すばる望遠鏡に常設されるため、突発現象が見つかった際に装置の交換なしで即座に観測へ移行できる。第二に、0.85〜2.5マイクロメートルという広大な近赤外線の波長域を1回の観測でまとめて網羅できる。第三に、地球の大気のゆらぎを打ち消す「補償光学」と組み合わせることで、きわめて暗い天体でも鮮明に捉えやすくなる。
NINJAは国立天文台先端技術センター(東京都三鷹市)を拠点に開発され、早稲田大学や東京大学の大学院生ら若手研究者も中心となって力を尽くした。2026年2月にハワイへ輸送され、山麓施設での動作確認を完了。開発に携わった早稲田大学の佐藤理究さんは、自ら手がけた装置とのハワイでの再会に感慨を深めつつ、「この装置を通して遠方銀河などの研究に取り組めることが楽しみだ」と抱負を語る。
重元素の生成メカニズム解明にとどまらず、宇宙初期の姿を留める遥か彼方の銀河観測まで、NINJAが切り拓く天文学の新たな境地に世界中の研究者から期待が寄せられている。