現実の世界で人間のすぐ隣を歩き、共に働く「フィジカルAI」ロボットの普及が急速に進む中、開発現場ではその「安全性」への懸念が浮き彫りになっている。AIがデジタル空間を飛び出し、ヒューマノイドや自動配送ロボットとして社会に溶け込む一方、これまでの産業用ロボットのような「柵で囲って隔離する」安全対策はもはや通用しなくなっている。
ソフトウェア企業のQNXが実施した調査によると、日本のロボット開発者の91%が「フィジカルAIは今後3〜5年で戦略的に重要になる」と回答した。しかし同時に、人間の生命や安全に関わる「セーフティ・クリティカル」な領域での運用について、28%が「自信がない」と答えている。これは世界平均を11ポイントも上回る数字であり、日本の技術者たちがAIの動作予測や制御の難しさに直面している現状がうかがえる。
経済産業省の試算では、フィジカルAI市場は2040年に約60兆円規模へ拡大すると予想されている。少子高齢化による人手不足に悩む日本にとって、ロボットの活用は産業競争力を維持するための命綱だ。医療・介護や物流、建設などの多種多様な現場でロボットが活躍するためには、あらゆる状況にリアルタイムで適応できる判断力が求められる。
これまでの「機械に合わせて人間が行動する」という前提は崩れつつある。これからのロボットには、人間の予期せぬ動きや環境の変化を正しく理解し、自律的に安全な行動を選択する高度な機能が不可欠だ。安全性は、もはや完成後の製品に付加する「追加機能」ではなく、設計の最初の段階から組み込むべき核心的な要件へと進化している。