数千年が過ぎた現在でも、なぜサフランは安くならないのでしょうか。ほんのわずかな量で高額な「サフラン」は、1オンス(約28グラム)で600ドル(約9万6000円)を超えることもあり、金と同じくらいの価値で取引される世界一高いスパイスです。
サフランが高価な最大の理由は、その手作業に頼る生産方法にあります。サフランは、サフランクロッカスという花の雌しべの先端にある「柱頭」という部分から作られます。1つの花からたった3本しかとれません。1キログラムのサフランを作るには、約15万輪の花が必要で、400時間以上の手作業がかかります。さらに、開花する時期は1年のうちわずか2週間ほどで、花がしおれる前の早朝に1輪ずつ手で摘み取らなければなりません。
サフランには長い歴史があります。3500年以上前のギリシャのフレスコ画には、女性たちがサフランの花を摘む様子が描かれています。古代ペルシャでは料理や香水、服の染料として使われ、アレクサンドロス大王やクレオパトラも風呂にサフランを入れて愛用していたという伝説が残っています。また、抗酸化作用や抗炎症作用があるため、古くから薬としても重宝されてきました。
他の作物のように品種改良が進まないことも、価格が高いままである理由です。サフランクロッカスは突然変異によって生まれた植物で、種子を作ることができません。そのため、人類は球茎を分けてクローンとして増やし、守り続けてきました。いま世界で育てられているサフランクロッカスはすべて1つのクローンから増えたものです。収量を増やす品種改良ができないため、今でも膨大な手作業に頼るしかありません。近年は気候変化による収穫の不安も高まっており、この「奇跡の植物」と伝統的な暮らしを守る取り組みが求められています。