男性ホルモンのテストステロン値は、低すぎても高すぎても心の健康を損ない、うつ病の発症リスクを高める可能性があることが大規模な追跡調査で分かった。従来はホルモンの減少のみが注目されがちだったが、過剰な場合もリスクが上昇するという極端な偏りを回避する重要性が浮き彫りになった。
中国の西安交通大学の何丹氏らの研究チームは、UKバイオバンクに登録された40歳から70歳の男性を対象に、血液サンプルから「総テストステロン」と、タンパク質と結合せず体内で作用しやすい「遊離テストステロン」を測定・算出した。その後、参加者の医療記録を平均約11年間追跡し、肥満度や生活習慣などの影響を考慮して分析を行った。
追跡期間中に3701人がうつ病と診断された。同じ年代の正常値を示した男性と比較したところ、総テストステロンが低値の男性はうつ病発症リスクが1.48倍、高値の男性も1.27倍に高まっていた。また、活性の高い遊離テストステロンにおいては、低値の群でリスクが1.99倍に達していた。
さらに詳細な分析では、遊離テストステロン値が同年代の平均付近から外れて低すぎても高すぎてもうつ病のリスクが高まる傾向が確認された。特に55歳から59歳の年齢層においては、遊離テストステロンが低値の男性の発症リスクが正常値の男性の3倍を超えていた。
ただし、今回の研究は実際の測定値とその後の診断との関連を追った観察研究であり、テストステロンの偏りが直接うつ病を引き起こすという因果関係を証明したものではない。また、血液検査が研究開始時の1回限りであったため、今後はホルモン量の長期的な変化とメンタルヘルスの関係を調べる継続的な調査が求められている。