オランダの古書店に突然届いた「3000冊以上の専門書を買い占めたい」という依頼。その背景には、人工知能(AI)の学習データを確保しようとするAI開発企業の激しい動きがあった。
オランダ・ハーレムにある古書店の店主のもとに、「2077AI」という組織の担当者から大量の書籍購入を求めるメールが届いた。添付されたリストには、有名な学術出版社が発行した経済や科学、医学などの書籍番号(ISBN)が3000件以上も並んでいた。店主は最初、詐欺メールだと疑って無視していたが、同様の依頼がドイツやスイス、カナダなどの古書店にも送られていたことが判明した。
AI開発企業が実物の書籍を求める理由は、大規模言語モデル(LLM)の精度を向上させるための「質の高い文章データ」がインターネット上で不足しているためだ。過去には、購入した書籍の背表紙を切断してスキャンし、デジタル化した後に廃棄する「破壊的スキャン」という手法をAI企業が採用していたことも発覚し、物議を醸していた。
ネット上のデータ収集が著作権侵害として訴訟沙汰になるなか、紙の本を直接買い集める手法へ移行する動きが加速している。文化財としての希少な書籍が失われる懸念や、データ利用をめぐる法的・倫理的な議論が今後さらに強まりそうだ。