太平洋戦争末期の1945年3月に起きた東京大空襲で命を落とした犠牲者7756人分の名前が記された「戦災者個別 遺骨霊名簿」が、東京都墨田区役所の庁舎内で新に見つかった。都が1951年ごろに作成した名簿全100冊のうち、現存が確認されたのはわずか2冊目で、行政の庁舎内からの発見は初めてとなる。約10万人が亡くなったとされる惨劇の記憶を個人の名とともに現代へ伝える貴重な史料として、区は2027年3月までの一般公開を目指して準備を進めている。
空襲の直後、身元の判明した遺体は公園などに仮埋葬され、遺留品などの情報をもとに個別記録が作成された。その後、1948年から1951年にかけて火葬が行われ、遺骨は墨田区の都慰霊堂へ納められた。これに合わせて東京都が作成したのが本名簿であり、遺族や関係者に向け区役所の窓口などにも置かれていたという。
今回の発見のきっかけは、予定されている庁舎改修工事に向けた備品整理だった。2026年4月、住民票などを扱う窓口課の保管資料の中から、長年眠っていた名簿が姿を現した。2001年に名簿作成に携わっていた元都職員が1冊を保管していたことが判明し、東京大空襲・戦災資料センター(江東区)へ寄贈された1冊目に続き、歴史の表舞台に再び戻ってきた形だ。
すみだ郷土文化資料館の石橋星志学芸員は、「空襲の重みを持って伝え、継承する上で犠牲者の名前が記載された資料は重要な価値がある」と語る。戦後80年近くが経過した今、犠牲者の記憶を留める名簿は、失われた命の尊さを静かに語りかけている。