言葉を正しく、はっきりと発音することが難しい「構音障害」に悩む人々にとって、家族や周りの人と意思を伝え合うことは大きな課題だった。日本国内に約85万人の患者がいると推定される中、人工知能(AI)技術と眼鏡型のスマートグラスを活用した新しいデバイスが登場し、これまでにない意思疎通の手段として注目されている。
構音障害は、舌や唇などの発声器官の障害をはじめ、脳卒中やパーキンソン病といった病気が原因で引き起こされる。また、聴覚の障害によって正しい発音を学習できなかった場合などにも発生する。一方で、言語を理解する能力や思考力、読み書きや聞き取りの能力には問題がない場合が多く、自分の思いを相手に正確に伝えるための方法が模索されてきた。これまでは筆談や50音表を指さす方法が一般的だったが、会話に時間がかかる点が難点とされていた。
今回開発されたシステムは、眼鏡型の「スマートグラス」と小型のコントローラー、そしてAIを組み合わせたものだ。利用者がスマートグラスを装着すると、空間上にキーボード画面が浮かび上がって見える。利用者は片手でコントローラーを操作して文章を入力するが、最大の機能はAIによる文章の予測表示だ。AIが利用者の視線の先にある対象物や周囲の動きを判別し、次に入力したい可能性が高い言葉を候補として提示する。作成された文章はスマートフォンやパソコンへ送信され、相手へ素早くメッセージが伝わる仕組みになっている。
このデバイスの登場により、構音障害を持つ人々がより日常生活で会話を楽しみ、社会とのつながりを深められる環境が整いつつある。AI技術が患者のコミュニケーションの壁を低くし、新たな可能性を切り開く一歩として大きな期待が寄せられている。