勝敗やスコアの概念がなく、リセットボタンすら存在しない世界で、AIは人間のように考えて行動できるでしょうか。Google DeepMindは、20年以上にわたって多くのプレイヤーが活動を続けるオンラインゲーム「EVE Online」を舞台に、より高度なAIの研究を始めました。
これまでのゲームAI研究では、1回の試合ごとに盤面がリセットされるような明確なルールが中心でした。しかし、現実の社会にはわかりやすい得点ややり直しは存在しません。「EVE Online」は、一つの広大な宇宙を全員で共有し、資源の奪い合いや経済の変動、他者との協力や裏切りが絶ず変化する環境です。このような持続的な世界こそが、現実世界の複雑さに立ち向かうAIの「知能を映す鏡」になると期待されています。
この研究においてAIに求められるのは、単に宇宙船を操作して敵を倒すことだけではありません。Google DeepMindは、状況が変わっても過去の知識を失わずに学び続ける「継続学習」、長期の記憶、そして数週間から数年単位で計画を立てる能力の検証を目指しています。さらに、多数のプレイヤーと交渉したり協力したりする高度なコミュニケーション能力も重要なテーマとなっています。
また、この試みはAIの研究だけでなく、初心者プレイヤーの支援など人を助ける機能の開発にも生かされています。Google DeepMindは、ゲームで培った技術や思考プロセスが将来的に科学研究や現実社会の課題解決に役立つと考えています。