千葉県習志野市の静かな倉庫街で、30台を越える人型ロボットが一斉に身体を動かし、作業を繰り返す異様な光景が広がっている。2026年8月26日、民間企業による日本初のフィジカルAI学習データ収集拠点「J-HRTI 関東データファクトリー」の内部が報道陣に公開された。深刻化する人手不足の解決策として期待されるヒューマノイドロボットだが、現場で自律的に機能させるためには、人間の複雑な動作を学習させる膨大なデータが不可欠となる。その知能の「糧」を生み出す最前線が、この非公開の施設だ。
約1,400平方メートルに及ぶ広大な敷地は、ロボットエリア、アノテーションエリア、テストエリアの3つに区分されている。ロボットエリアでは、中国Unitree Robotics社の「Unitree G1」などのヒューマノイドロボットが配置され、背後に控える人間のオペレーターが遠隔操作でロボットを動かしている。ロボットは自律行動しているわけではなく、人間が手本を示すことで、視覚情報や関節の力加減といった高品質な身体データを集積しているのだ。物品のピックアンドプレースや搬送といった基本動作を多様な角度や照明条件で反復し、AIモデルの構築に耐えうるデータを日々抽出している。
この施設を運営するのは、INSOL-HIGH社を事務局とし、山善やツムラ、芙蓉総合リースなど多岐にわたる業界の企業が参画するコンソーシアム「J-HRTI」である。ヒューマノイドロボットの導入検証(PoC)は1社単独で行うには莫大な設備投資とコストがかかるが、共同でデータファクトリーを設立することでリソースを分散し、共同資産としてデータを共有する画期的な仕組みを創出した。獲得されたデータを各社にシェアし、現場ごとのファインチューニングを可能にすることで、実用化へのハードルを一気に下げる狙いがある。
J-HRTIの代表者であるINSOL-HIGHの釼持大介CEOは、単一の企業では対応しきれない汎用データの集積加速を強調する。今回の関東データファクトリーを「マザー拠点」と位置づけ、将来的には全国10箇所へデータ収集ネットワークを拡大させる計画だ。工場や物流現場の人手不足が深刻さを増す中、ロボットが「頭脳」と「身体」を獲得するためのこの先進的な試みが、日本の産業界におけるオートメーションの未来を大きく推し進めることになりそうだ。