一般の歯科クリニックで撮影した写真から、わずか約30秒で口腔がんなどの危険な病変の疑いを検出する医療用AIが実用化にいたった。大阪大学大学院歯学研究科などの研究チームが開発した「口腔粘膜画像解析システム Mucosight AI」が、厚生労働省よりプログラム医療機器(SaMD)としての製造販売承認を取得し、2026年8月下旬より国内でサービス提供が開始される。
初期の口腔がんは口内炎や良性の腫瘍、白板症などの良性疾患と外見が酷似しており、専門知識を持たない一般の歯科医師が肉眼で正確に見分けることは極めて困難であった。そのため、専門医のいる高次医療機関への適切な紹介が遅れ、病状が進行してしまう点が長年の医療課題とされていた。
「Mucosight AI」は、歯科医師がスマートフォンのブラウザなどから患者の患部写真をクラウドへアップロードすると、事前に学習したAIモデルが即座に解析を行う。解析結果は症例の類似度に応じた4色の枠で強調表示され、確定診断ではなく、高次医療機関へ紹介すべきかを判断する「受診勧奨」を補助する目的で活用される。出力された結果は紹介状に添付できるため、専門医への情報共有もスムーズに行える。
本プロジェクトは、大阪大学が研究開発と知的財産を担当し、米NVIDIAがAI開発の技術助言やデータ前処理のノウハウを提供、そして株式会社モリタ東京製作所が製品化と製造販売を担うという3者の緊密な連携によって進められてきた。NVIDIAは2018年から開発に参画しており、アノテーションツールや前処理手法の助言を行ったほか、大阪大学のGPU搭載スーパーコンピューター「Octopus」や「SQUID」を活用して膨大な臨床データの高速な解析と再学習サイクルを実現した。
早期発見が難しいとされる口腔がんにおいて、かかりつけの歯科医師がAIを活用して手軽にスクリーニングを行えるようになることで、重症化を防ぎ救命率を向上させる新たな医療体制の構築が期待されている。