釣った魚に墨を塗って紙に写しをとる「魚拓」が、きれいなアートやデジタル技術として新しく生れ変わっています。東京では、エジプト出身の女性スタッフが色彩豊かな「美術魚拓」を体験し、日本の伝統文化の美しさを実感しました。
魚拓の歴史は古く、江戸時代の山形県庄内地方で始まったとされています。当時の武士たちは、心と体を鍛えるために海で魚を釣っていました。厳しい自然のなかで大きな魚を捕まえることは「勝負」と呼ばれ、その記録や記念として魚拓がつくられました。現存する日本最古の魚拓は1839年のもので、お殿さまが釣ったフナを写したものです。
昔の魚拓は黒い墨だけで形を残すものでしたが、戦後になると絵のぐを使って魚の本物のような色や姿を表現する「美術魚拓」が広がりました。水草や葉をいっしょに描くことで、まるで1枚の絵画のような作品になります。また、最近ではスマートフォンで撮った写真を加工して日付や大きさを記録する「デジタル魚拓」も人気を集めています。魚を海に返した場合でも思い出を残せるため、多くの愛好家に利用されています。
「竜の子会」というグループで美術魚拓を体験したマルワ・アドリーさんは、マダイに薄い和紙をのせ、その上から「タンポ」と呼ばれる布の道具で絵のぐをトントンと優しくたたき込む「間接法」に挑戦しました。青や黄、赤などの色を何層も重ねることで、魚の立体感やかがやきが浮き上がってきます。マルワさんは「魚のひれやウロコをこんなに細かく観察したのは初めて。時間をかけて写しとることで、自然の美しさを感じることができました」と語りました。