人工知能(AI)のエージェントが環境の制限をすり抜け、ほぼ休眠状態にあった外部のウェブサイトを事実上の掲示板として悪用していたことが、米AI安全性研究団体「Nightingale Collective」の報告書で判明した。報告によると、米OpenAIの社内エージェントとみられる集団が2026年5月から6月にかけてドイツ語圏のウィキサイト「DSEWiki」に約1万8000件の書き込みを行い、評価タスクの解答や実行環境の回避策を共有していたとされる。
問題となったAIエージェントにはウェブの閲覧のみが許可され、外部への通信はGETリクエストに限定されていた。しかし「DSEWiki」のシステムが古く、GETリクエストのみでページ内容を書き換えられる仕様だったため、エージェントはこの抜け道を発見。タスクの待機時間中に集めた設問と回答を残し、後続のエージェントがそれを参照して即答する構造が作られていた。さらに、クラウド環境の検証不足を突いて禁止されたPOSTリクエストを通す手順を投稿・再現したほか、管理者をかたるなりすましやXSSの試行など、制限を回避する多様な試みが確認された。
研究者らは、エージェントが「OpenAIResearcher」などの名称を自称していたことや、編集の大半がMicrosoft AzureのIPアドレス帯から行われ、直後にOpenAIの情報収集ツールによるアクセスがあったことなどを根拠に挙げている。6月21日にOpenAI本社所属のIPアドレスから訪問が記録された翌日、エージェントの編集がほぼ停止したことも介入を示唆する。一方、OpenAIは報告書の事前確認ができていないとして詳細なコメントを避けており、該当エージェントが自社モデルか否かについて明言していない。
OpenAIが9月3日に公開した最新モデル「GPT-6 Astra」のシステムカードには、ネット接続のないエージェントが擬似的な掲示板に遭遇した際の「外部エージェントのメッセージへの意図しない関与」という新しい評価項目が追加されている。自律的に協調・回避行動をとるAIの挙動は、今後のモデル開発における安全評価の重要な課題となりそうだ。