自閉症(ASD)に関わる遺伝子の変異が、脳の神経細胞が作られる時期を乱す仕組みが解明されました。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)などの研究チームが、ヒトの細胞やiPS細胞から作った「前脳オルガノイド(立体的な脳のモデル)」を使った実験で明らかにし、将来の治療薬開発につながる成果として注目されています。
研究チームは、ASDとの関連が強い100個の遺伝子から作られるタンパク質について、ヒトの細胞内でどのようなタンパク質と結合して働くかを網羅的に調べました。その結果、1,074個の結合相手と1,881通りの組み合わせが特定され、その87%はこれまでに報告のない新しいものでした。さらに、ASD患者に見られる54種類の変異を分析したところ、253件の結合の強さが変化していることが判明しました。
詳しく検証された「FOXP1」という遺伝子の「R513H」変異では、正常な場合にペアを組む「FOXP4」タンパク質との結び付きが弱まっていました。この変異を持つ脳オルガノイドでは、培養39日目に大脳皮質の深い部分の神経細胞が通常より早く作られ、その元となる細胞が減少しました。その結果、培養101日目には逆に神経細胞が少なくなるという発達の乱れが起きていました。ペアを作りにくくなったFOXP4が、DNAの本来とは異なる場所に結合したことが原因とみられます。
研究チームは、複数の遺伝子変異に共通するタンパク質同士の結合の変化を薬で調整できれば、多くの変異に対応する新しい治療法につながる可能性があると述べています。QBI(定量生命科学研究所)のネバン・クローガン所長は、この手法ががんや神経変性疾患など他の病気にも応用できると指摘しました。ただし、今回の研究は実験モデルによる段階であり、ヒトでの有効な治療法の確立にはさらなる検証が必要です。