人工知能(AI)を使って動物の鳴き声を分析し、人間と動物の会話を実現させようとする研究が進む一方で、生態系への悪影響や動物の搾取につながるという倫理的な懸念が高まっています。
生物学者のヴィットーリオ・バジリオーネ氏らの研究チームは、カラスに取り付けたマイクからの膨大な音声データをAIで分析し、仲間を呼ぶ鳴き声などを識別することに成功しました。また、投資家のジェレミー・コラー氏は2030年までに双方向のコミュニケーションが可能になると主張しています。動物の内面的な世界への理解が深まることへの期待がある反面、密猟者や軍事目的への悪用を懸念する声もあがっています。
特に議論となっているのが、録音した音声を動物に聞かせて反応を観察する「プレイバック」という実験手法です。ニューヨーク大学のセザール・ロドリゲス=ガラヴィト教授らは、この実験が動物に強いストレスを与えたり、群れの社会関係を乱したりする恐れがあると指摘しています。過去には、亡くなったゾウの鳴き声をその孫に聞かせたところ、激しく動揺した事例も報告されています。
現行のガイドラインはAIを活用した研究を想定しておらず、倫理的な基準の整備が追いついていません。専門家からは、プレイバック実験の対象を人間との交流を楽しみ、自発的に離れられるバンドウイルカなどに制限すべきだという意見も出されています。科学の発展がもたらす利益と動物への負担のバランスをいかに取るか、慎重な議論が求められています。