米AIスタートアップのAnthropicは、大規模言語モデル(LLM)の内部に、人間の意識研究における「グローバルワークスペース」と類似した構造が自然に形成されていることを発見した。この領域を「J-space」と命名し、その状態を可視化する手法「Jacobian lens(J-lens)」を公開した。モデルが外部に出力しない「内なる思考」を読み取ることで、AIの安全性監視などに役立てる。
J-spaceは、モデル全体の活動における極めて限定的なパターンから構成される。モデルが特定の概念を「出力」するのではなく、「思考」している状態を示すという。例えば、バグを含むコードを読み取った際に「ERROR」と想起し、指示を悪用する攻撃を検知した際には「injection」や「fake」といった情報を内部で処理しているが、これらはテキスト出力には現れない。
研究グループは、J-spaceがグローバルワークスペース理論における「アクセス意識」の条件を満たしていることを実験で確認した。質問に対して思考内容を報告でき、意図的な操作が可能であり、かつ推論の結果に因果的な影響を与える。実際、蜘蛛の脚の数を推論させる際、J-space内の「spider」を「ant」に置き換えたところ、出力結果が「8本」から「6本」に変化したという。さらに、J-spaceの機能を無効化すると、単純な会話は可能であるものの、高度な推論や要約、創作といった複雑な思考能力が著しく低下することが確認された。
また、この技術はAIの安全性監視への応用が期待される。モデルが不正な指示に対して裏で「secretly」や「manipulation」といった意図を抱いているか、あるいは評価テストであることを認識しているかを外部から監視できるためだ。
Anthropicは、これが主観的な体験を伴う「現象的意識」を示すものではないと慎重な立場を取りつつも、知的なシステムが学習する過程で機能的な意識の仕組みが自発的に獲得される可能性を示唆している。