便利で地球規模の通信を可能にする人工衛星の大量打ち上げが、地球の上層大気に深刻な影響を及ぼしかねないという懸念が高まっている。ロケットの打ち上げや人工衛星が大気圏へ再突入する際に放出される汚染物質が、これまでの予測を上回るペースで成層圏に蓄積していることが最新の研究で明らかになった。
これまでは、多数の人工衛星によって構築される通信網「衛星コンステレーション」がもたらす影響として、天体観測への妨害などが主に議論されてきた。しかし近年、大気環境への影響も無視できない深刻な問題として浮上している。
ロケットの燃焼プロセスや、大気圏への再突入によって燃え尽きる衛星から放出される物質は、極めて空気の流れが遅い成層圏において数年以上にわたり残留する。
特に懸念されるのが、燃料の燃焼時に生じる「煤(ブラックカーボン)」による気候変動への影響だ。
成層圏に放出された煤は、地上付近で排出されるものと比較して、地球を温暖化させる効果が約540倍も高いと推定されている。
太陽光の減少による冷却効果を指摘するシミュレーション結果もあるが、高層大気における物理・化学的反応には未解明な点が多く、地球温暖化の対策になると安易に考えるべきではないと研究者は警告している。
さらに深刻なのは、今後予定されている多種多様なロケットの打ち上げにより、オゾン層の破壊やさらなる化学反応が生じる可能性だ。
一部のロケットが使用する燃料や固体ロケットブースターは、オゾン層を破壊する塩素などの有害な物質を大量に放出する。また、たとえ比較的クリーンとされる燃料であっても、超音速で大気圏を再突入する際に生じる衝撃波などにより、温室効果ガスでありオゾン層破壊物質でもある窒素酸化物(NOx)が急激に増加することが確認されている。
利便性のみを優先し、適切な規制がないまま衛星配備が進めば、上層大気の環境に取り返しのつかない打撃を与えることになりかねない。過去の環境問題の教訓を生かし、国際的な枠組みによる早期の対策が強く望まれている。