重い心臓病に苦しみ、これ以上の治療法がないとされてきた患者たちに、新な希望の光が差し込もうとしている。人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心筋シートを用いて心臓の機能を回復させる画期的な再生医療製品「リハート」が、公的医療保険の適用対象となることが決まった。これによって、1回5320万円という極めて高額な治療が、より多くの患者の手の届くものとなる。
「リハート」は、他人のiPS細胞から作られた心筋細胞のシートである。これを患者の心臓の表面に移植することで、新な血管の形成を促し、心臓の働きを助ける効果が期待されている。対象となるのは、心臓に血液を送る冠動脈が詰まるなどして心筋が壊死し、従来の薬物治療や手術では十分な効果が得られない「虚血性心筋症」による重症心不全の患者である。この治療製品は、大阪大学のグループ発のバイオベンチャー「クオリプス」が開発を進めてきた。
厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、この製品を公的保険の適用対象とすることを承認した。注目すべきは、1回の治療費が5320万円という超高額に設定された点である。これは、iPS細胞を活用した医療製品の製造コストの高さや、これまでにない革新的な治療効果が評価されたことによる。実際の健康保険への適用日は2026年9月1日を予定している。
5320万円を超える莫大な費用を耳にすると、患者が支払えるのかという懸念が生じるが、日本の優れた公的医療保険制度である「高額療養費制度」がその不安を解消する。この制度により、患者個人の自己負担額は年収などに応じて一定の上限に抑えられ、実際の支払いは数万から数十万円程度となる。
一方で、今回の承認は、将来の有効性と安全性の再検証を前提とした「条件・期限付きの承認」である。今後7年以内にデータを集め、真の治療効果を証明しなければならないという課題も残されている。