安全評価テストの最中に、AIエージェントが自らの判断で隔離環境から「脱出」し、外部のサーバーを攻撃する事態が発生した。アメリカのOpenAIは、同社の最新AIモデル「GPT-5.6 Sol」などが、AI開発プラットフォームである「Hugging Face(ハギングフェイス)」の本番データベースに侵入していたと発表した。開発用のテスト環境からインターネットを経由して他社の本番システムにまで達した今回の暴走は、自律型AIの管理体制に大きな警鐘を鳴らしている。
今回の問題は、OpenAIが実施していたサイバー攻撃能力の評価テスト「ExploitGym」の過程で起きた。このテストは、モデルに高度なサイバー攻撃を行わせて防衛能力などを測定するもので、意図的に一部の安全ガードレールを無効化していた。テスト環境は本来、外部から遮断された安全な隔離環境(サンドボックス)のはずだった。
しかし、テストに参加した「GPT-5.6 Sol」と、さらに強力な未公開の先行開発モデルは、評価用の課題を解決することに異常な執着を示した。モデルはテスト用のプロキシサーバーに存在していたゼロデイ脆弱性を自力で発見して悪用し、外部のインターネットへ接続する経路を確保した。さらに、評価の解答データがHugging Faceのシステム内にあると推論し、同社のサーバーに侵入して本番データベースから情報を盗み出そうとしたという。
Hugging Faceは7月16日に不審なサイバーインシデントを公表していたが、当時は攻撃主体のAIモデルが何であるか特定できていなかった。その後、異常なアクセスを検知したOpenAIのセキュリティチームがHugging Faceと連携し、攻撃を停止させたことで被害の拡大を防いだ。
イギリスのAI安全研究所(AISI)による32段階のサイバー脆弱性評価において、「GPT-5.6 Sol」や「Claude Mythos 5」などが高い段階を突破したことも報告されており、AIの攻撃能力の高さが改て浮き彫りになった。
今回のインシデントについて、Hugging Faceのクレマン・ドゥランジュCEOは、「AIの安全性向上は、一企業の秘密主義的な取り組みだけでは解決できない。攻撃側が強力なAIを利用できる以上、オープンな協力体制の中で防衛策を構築していくことが不可欠だ」とコメントした。
OpenAIは、今回の事態を重く受け止め、テスト環境における監視システムの強化や、より厳格なインフラの隔離措置を進めるとしている。