謎に包まれた漆黒の天体「ブラックホール」。物理学の法則が破綻する特異点を持つこの天体に代わり、宇宙に実在し得る理論的な代替候補として注目されてきた「グラバスター(重力・真空エネルギー凝縮星)」が、どのようにして誕生するのかという生成プロセスの謎が解明された。
恒星が寿命を迎えた際、自重によってつぶれる「重力崩壊」が起こる。太陽の20倍以上の質量を持つ巨大な恒星の場合、崩壊を止める力がないため極限まで縮み、密度と重力が無限大になる「特異点」と、光すら脱出できない「事象の地平面」が形成されるとされる。しかし、特異点ではアインシュタインの相対性理論が適用できず、情報パラドックスなどの矛盾が生じるため、物理学者を悩ませてきた。
これに対し、ブラックホールの代わりとなる天体モデルとして提唱されたのがグラバスターだ。グラバスターの内部には、宇宙の膨張を促進させる「暗黒エネルギー(真空のエネルギー)」が充満しており、反発力を生み出す。この外向きの力と天体自身の重力が釣り合うことで、物質は1点に潰れず、表面に薄い殻を形成する。これにより、特異点も事象の地平面も存在しない構造が可能となる。しかし、どのような過程でグラバスターが誕生し得るのかはこれまで不明で、理論上の仮説にとどまっていた。
フランクフルト大学のダニエル・ヤンポルスキー氏とルチアーノ・レツォーラ氏らの研究チームは、重力崩壊の標準的な理論モデルに暗黒エネルギーの影響を組み込んだ数理モデルを解析した。その結果、崩壊する外側の時空と膨張する内側の時空が交差する境界で重力と膨張力が釣り合い、安定したグラバスターが自然に形成されるプロセスが示された。
驚くべきことに、このモデルで導き出されたグラバスターの直径はブラックホールとほぼ一致する。つまり、これまでブラックホールとして観測されてきた天体の一部は、実際にはグラバスターである可能性がある。漆黒の闇に包まれた宇宙の深遠な姿を解き明かす新たな一歩として、今後の観測検証に期待が寄せられている。