日本の宇宙探査機「はやぶさ2」が、高速で移動しながら小惑星「トリフネ」の表面からわずか約400メートルという驚異的な近距離を通過することに成功しました。これは、これまでに太陽系の天体をすれ違いざまに観測する「フライバイ探査」で記録された中で、最も天体に近づいた世界新記録となります。地球に接近する小惑星の衝突を防ぐ「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」の技術を実証する、歴史的な快挙となりました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発表によると、はやぶさ2は2026年7月5日午後6時30分ごろ、トリフネの中心から約744メートル、表面からは約400メートルの位置を過ぎ去りました。目標としていた地点からの誤差はわずか120メートルで、地上からの電波や画像による追跡に加え、新しく開発された探査機自体が自動で位置を計算するプログラム(オンボード航法ソフトウェア)が正確に働きました。
さらに、高速で飛び去る探査機からレーザーを照射して距離を測る「LIDAR(レーザー高度計)」による計測にも世界で初めて成功しました。JAXAはこの超高精度な制御を、走る馬の上から的を狙う日本の伝統技術「流鏑馬」に例えて説明しています。はやぶさ2は最接近の直前、約20キロメートルと約15キロメートルの距離からそれぞれレーザーの反射光を捉えることに成功しました。
今回観測されたトリフネは、2つの岩石がくびれた部分でつながった「接触二重小惑星」と呼ばれる珍しい形をしており、長い部分の長さが約840メートル、短い部分が約340メートルであることが判明しました。はやぶさ2は2020年に小惑星リュウグウの砂を地球へ届けた後、新しい任務「はやぶさ2#(シャープ)」として旅を続けています。すでにイオンエンジンの運転を再開しており、2031年7月には次の目的地である超小型の小惑星「1998 KY26」への到着を目指します。