どんなに知恵を絞っても、「あらゆる選挙結果で100%公平な選挙」を実現する制度は存在しない――。そんな衝撃的な数学的証明が発表された。
民主主義国家で求められる選挙制度には、地域の代表を選ぶ「地域代表性」、全国の得票率を反映させる「比例性」、そして議会の「固定された議席数」という3つの条件が期待される。しかし、研究チームが示した「不可能性定理」によると、複数の選挙区があり政党が多い場合、これら3つの条件をすべて満たす配分方法は原理的に存在しないことが明らかになった。これは特定の国の制度設計のミスではなく、選挙制度そのものに潜む限界だという。
実際の政治でもこの矛盾は顕著に表れている。デンマークの2022年総選挙では、40の補正議席では全得票とのずれを解消できず、社会民主党が本来より1議席多く獲得した。わずか1議席の差であったものの、これによって左派陣営が右派陣営よりも少ない得票数で議会の多数派を占めるという逆転現象が生じた。またドイツでは、地域での当選者と比例性を共存させようとした結果、議席数が膨張し続け、2021年には基準となる598議席を大幅に上回る736議席にまで達した。
こうした課題に対し、研究チームは比例性を最優先する新しい枠組み「Geographically Ranked Guaranteed Proportionality」を提案している。これは、全国での得票率から各政党の総議席数をあらかじめ確定させ、その後に地域ごとの得票成績が高い順に議席を分配していく仕組みだ。ただしこの方式では、選挙区で最多得票を得た候補者であっても、所属する政党の全体枠が埋まっていれば落選する可能性がある。
研究チームは「完璧な制度は存在しないが、3条件をおおむね満たす制度は実現できる」と主張する。大切なのは完全な公平さを追い求めることではなく、どの要素を優先し、どの不利益を受け入れるかを明確に選択することだといえそうだ。