かつて10代の少年兵たちが過酷な訓練で命を落とした海の景色をたどり、知られざる特攻部隊の歴史を記録した写真集が出版された。横浜市出身の写真家、濵本奏さん(25歳)は、太平洋戦争末期に旧日本海軍が極秘裏に編成した「伏龍」の足跡をカメラに収めた。
「伏龍」は、重さ約70キロの潜水具を身につけて海底に潜み、竹棒の先につけた機雷で敵の船を突いて爆破する「人間機雷」と呼ばれる作戦だった。成功すれば本人も爆死する非人道的なもので、主力は10代の少年兵たちだった。出撃には至らず終戦を迎えたものの、神奈川県横須賀市の野比海岸で行われた訓練では多くの犠牲者が出た。詳細な資料は無いが、「毎日1〜2人が亡くなった」「50人を超す」といった証言が残されている。
野比海岸は濵本さんにとってかつて友人とドライブで訪れ、海を眺めた思い出の場所だった。数年前に鎌倉市に「出撃基地の遺構がある」と聞き、初めて伏龍の存在を知った。自然は昔と変わらず美しいのに、かつて人間が海に潜んでまで特攻していた異常さに強い衝撃を受けた。
遺体が収容されていない死者がいることも気になり、「自分ごと」として歴史を残さねばならないという使命感に駆られた濵本さんは、隊員の体験記を手がかりに撮影を重ねた。2025年8月には写真集「―・・」(チョー タン タン)を自ら出版。題名は訓練中の信号に由来し、「知られざる歴史を若い世代にも知ってほしい」という願いが込められた作品は評価を呼び、増刷を経て通販サイトや取り扱い書店で販売されている。