サイバー攻撃の脅威が高まるなか、企業のプログラムコードに潜む安全上の欠陥(脆弱性)をすばやく見つけて直すため、最先端の人工知能(AI)が本格的に活用され始めました。米Anthropicは8月21日、同社の最高峰AIモデル「Claude Mythos 5」を、企業向けセキュリティ機能「Claude Security」で利用できるようにしたと発表しました。これまでMythos 5は一般公開されていませんでしたが、「Claude Enterprise」プランを契約している顧客は、追加料金なしでその高度な分析能力をスキャンに使えるようになります。
ただし、ユーザーがMythos 5と直接対話してプロンプト(指示文)を送ることはできません。AIモデル自体へのアクセスを制限し、管理画面から対象のコード(プログラム)を選択することで、AIがプログラムを自動で検査します。検出された脆弱性の種類や危険度の評価、そして修正案だけがユーザーに届く仕組みです。修正案を適用する際はWeb版の「Claude Code」を通じて行われますが、実際にコードを変更する前に必ず人間が内容を確認して承認する必要があります。
Anthropicがこのような厳しい制限を設けた背景には、AIの悪用を防ぐ狙いがあります。強力なAIモデルに誰でも自由にアクセスできる状態は、サイバー攻撃者に悪用されるリスクが高くなります。しかし、出力を脆弱性の検出結果や修正パッチのみに絞り込めば、モデルの能力を安全に防御側へ提供できます。Anthropicは今年4月から「Project Glasswing」という試みを進めており、攻撃者がAIを手に入れる前に、守る側が欠陥を発見して修復できる環境づくりを目指しています。
さらにAnthropicは、他のセキュリティ企業と連携して既存の防御ツールにMythos 5を組み込むパートナーシップを推進しています。また、無償で公開されているオープンソースソフトウェアの安全性を高めるため、総額3500万ドル(約50億円)相当の利用クレジットを提供する基金「Defender Advantage Fund」の設立も発表しました。セキュリティの防御側に最上位AIの力を届け、社会全体のデジタル安全性を底上げする取り組みが一段と加速しそうです。