ピアノで短いメロディーを弾いて指を止めると、わずか2秒でAIがその演奏に合わせて曲の続きを自動で作り出してくれる——そんな新しいスマートフォン向けアプリ「RollTab」が登場しました。開発者のエドワードソン氏が公開したこのアプリは、MIDIキーボードをスマートフォンに接続して演奏するだけで、AIがリアルタイムに音符を予測して音楽を展開させます。
デモでは、「ポケットモンスター赤・緑」の「マサラタウン」のBGMや、「ファイナルファンタジーVI」の「ティナのテーマ」、クラシックの「エリーゼのために」などの有名な楽曲を少し入力するだけで、AIがそのスタイルのまま見事に曲を続けて演奏する様子が確認できます。
「RollTab」の大きな特徴は、音声データではなくMIDIイベントをAIモデルに直接学習させている点です。エドワードソン氏は1億2500万個のパラメータを持つTransformerモデルを独自に開発しました。MIDIは「どんな音をどのタイミングでどれくらいの強さと長さで鳴らすか」というイベント情報を記録するフォーマットです。従来の方式では処理速度や入力制限に課題がありましたが、音符の属性をまとめた「NOTE(pitch, delta_onset, duration, velocity)」という表現方法を採用することで、1音符ずつ効率よく処理できるようにしました。これにより、iPhone上でも1秒間に約108音符という、人間のライブ演奏をはるかに超えるスピードで生成が可能になりました。
モデルの学習には数十万件のクラシック音楽などのデータが使われました。評価段階ではGemini 3.5 Flashを活用して2つの生成結果を比較・判定させ、DPO(Direct Preference Optimization)という追加学習手法によって信頼性の高い演奏能力を実現しています。エドワードソン氏は「ピアノの前に座って音を出し、そこからどんな音楽が生まれるかを見るのが楽しい」と語っており、AIとの新しいセッションの形として注目を集めています。