世界的なAIブームと高度デジタル社会の到来に伴い、最先端の半導体をめぐる国家間の覇権争いがかつてない熱を帯びている。記憶用半導体大手である日本のキオクシアと米サンディスクは、2032年までに日本国内へ総額約5兆円を投じる大規模な設備投資計画を発表した。次世代メモリの供給能力を飛躍的に高め、世界市場での優位性を強固にする狙いだ。
今回の投資は、三重県四日市市と岩手県北上市にある既存工場を対象に行われる。キオクシアは北上市工場において、最新の「第3製造棟(K3棟)」の建設に向けた用地造成をすでに開始した。2025年9月に稼働した第2製造棟に隣接し、2029年度の操業開始を目指す。両社は過去25年間にわたり累計約9兆円を日本国内に投入してきた実績を持つが、今回の巨額投資は日本政府による補助金支援を前提としている。サンディスクの最高経営責任者(CEO)であるデービッド・ゲックラー氏は、「本決定は我が国の経済競争力を象徴する画期的な成果だ」と自信をのぞかせる。
半導体生産の維持発展は、単なる一企業間の商戦にとどまらず、国家の経済安全保障を左右する最重要課題へと変貌を遂げた。日本政府も国家戦略の一環として2040年度までにAI・半導体分野へ100兆円超の官民投資を促す目標を掲げ、全面支援を打ち出す。一方で、海外勢も猛追する。中国では「科学技術の自立自強」を掲げる政府支援の下、メモリ大手YMTCが米国の輸出規制を跳ね返すべくIPO(新規株式公開)による7800億円規模の資金調達に動く。さらに韓国のSKハイニックスも、米国インディアナ州で先端パッケージング工場の建設に着手し、2029年の量産化に向け米国市場での現地生産体制を整える。
国家からの莫大な財政支援なしには、もはや最先端の半導体産業を維持・育成することが困難な時代を迎えている。日米中韓が入り乱れる巨額投資の応酬のなかで、技術革新と供給網の確保を成し遂げられるかが今後の鍵を握る。