AIが数学の歴史的な難問である「フェルマーの最終定理」の形式化を11日間で完成させました。Anthropicの研究者であるティエンイー・ペン氏らの発表によると、AIモデルのClaudeが約1300万行に及ぶコードを生成し、コンピューターで完全に検証できる証明を構築しました。形式化とは、人間向けの数学的な論理を、証明支援システム「Lean」のようなコンピューターが厳密にチェックできる形へ書き直す作業のことです。
フェルマーの最終定理は、17世紀にピエール・ド・フェルマー氏が提唱して以来350年以上にわたって未解決でしたが、1995年にアンドリュー・ワイルズ氏らが129ページに及ぶ論文で証明を完成させました。解明されたものの、人間による論文の検証には数カ月を要しました。さらに、人間向けの論文では「明らか」として省略されがちな細かな論理も、コンピューターに確認させるにはすべての手順を厳密に記述しなければなりません。インペリアル・カレッジ・ロンドンのケビン・バザード氏らの研究チームが2024年から進めている共同プロジェクトでも、形式化には数年かかると見込まれていました。
Anthropicが数十のClaudeエージェントを投入した初期の試みでは、各エージェントがプロジェクト全体の進捗を把握できず、互いの成果を再利用できないといった課題が生じました。そこでペン氏らは、数学形式化用の共同作業プラットフォーム「Prove2Me」を開発しました。Prove2Meは定理同士の依存関係を有向非巡回グラフ(DAG)で管理し、各AIが次に証明すべき命題を明確に把握できるようにしました。さらに、定理の記述と証明を別ファイルに分離してコンパイルを高速化し、自然言語による説明を付与することで検索性を高めました。その結果、Claudeは11日間で約3万300件の定理を証明し、そのうち約2万9500件を最終的な証明に組み込むことに成功しました。
完成したコードの規模は約1300万行に上り、標準的な数学ライブラリ「Mathlib」の5倍以上に達します。この証明は未証明部分を残す「sorry」などの一時的な記述を含まず、Leanの標準的な3つの公理のみに依存しています。さらに、Rust言語で書かれた独立した検証プログラム「nanoda」による検査でも、100万件以上の宣言がエラーなしで検査されました。AIが大量の複雑な証明を高速に生成できるようになるにつれ、人間だけで検証する負担は増大しています。Anthropicは将来、人間の読者向けの論文と並行して、コンピューターで自動検証できる形式化された証明を併記して公開することが数学界の標準になると予測しています。