米人工知能(AI)開発企業のAnthropicの研究者らは9月9日、AIの進化や普及が米国経済や雇用に与える影響について分析したレポートを公開しました。AIの発展スピードや社会への浸透度に応じて「控えめ」「大幅」「極端」という3つのシナリオを提示し、それぞれで労働市場や経済成長が大きく異なると予想しています。
最も現実に近い成長を見込む「大幅」シナリオでは、2030年までにAIが知識労働の半分を担う能力を持つものの、実際の業務の多くはAIなしで行われるとみています。この場合、2030年のGDP(国内総生産)はAIがない場合と比べて8.3%増加します。知識労働者の賃金は0.3%減とほぼ横ばいにとどまる一方、それ以外の労働者の賃金は5.9%増加し、全体の失業率は4.6%と予測されています。また、普及がゆるやかな「控えめ」シナリオでは、GDPの増加率は1.6%にとどまり、労働分配率は59.4%になると計算されています。
一方で、AIが知識労働のほぼ全てを自律的にこなし急速に普及する「極端」シナリオでは、深刻な事態が想定されています。このケースではGDPが32.4%増と大きく伸びるものの、知識労働者の賃金は11.5%減り、失業率は知識労働者で17.9%、全体でも11.9%に上昇します。さらに労働分配率も45.2%まで低下します。同社は、大量失業が起きるのはこの「極端」シナリオのみであるとしています。
今回の予想についてAnthropicは、政策対応や景気循環、金融市場の混乱、「超高性能ロボット」の実現などを考慮していないと述べています。同社は「他の経済モデルと同様、このモデルにも課題がある」として、予想の限界について触れています。